令和2年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。

精神障害での労災認定件数が過去最多 理由のトップはパワハラ

今年も労災補償状況が公表されました。

とうとうというか、コロナの状況のストレスからという感じではありますが、精神障害での労災認定件数が過去最多となりました。

〇 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況
  1. 請求件数は784件で、前年度比152件の減
  2. 支給決定件数は194件で、前年度比22件の減(うち死亡件数は前年度比19件減の67件)
  3. 業種別(大分類)において、
    請求件数は「運輸業,郵便業」158件、「卸売業,小売業」111件、「建設業」108件
    支給決定件数は「運輸業,郵便業」58件、「卸売業,小売業」38件、「建設業」27件
  4. 業種別(中分類)においては、請求件数、支給決定件数ともに業種別(大分類)の「運輸業,郵便業」のうち「道路貨物運送業」118件、55件が最多
  5. 職種別(大分類)において、
    請求件数は「輸送・機械運転従事者」148件、「専門的・技術的職業従事者」112件、「サービス職業従事者」80件
    支給決定件数は「輸送・機械運転従事者」60件、「専門的・技術的職業従事者」27件、「販売従事者」と「サービス職業従事者」23件
  6. 職種別(中分類)では、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「輸送・機械運転従事者」のうち「自動車運転従事者」137件、58件が最多。P8 表1-3-1、P9 表1-3-2
  7. (5)年齢別では、請求件数は「50~59歳」264件、「60歳以上」261件、「40~49歳」204件の順で多く、支給決定件数は「50~59歳」65件、「40~49歳」64件、「60歳以上」44件の順に多い。P10 表1-4
  8. (6)時間外労働時間別(1か月または2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」27件が最も多い。また、「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」75件が最も多い。

〇 精神障害に関する事案の労災補償状況

  1. 請求件数は2,051件で、前年度比9件の減(うち未遂を含む自殺の件数は前年度比47件減の155件)
  2. 支給決定件数は608件で、前年度比99件の増(うち未遂を含む自殺の件数は前年度比7件減の81件)
  3. 業種別(大分類)において、
    請求件数は「医療、福祉」488件、「製造業」326件、「卸売業、小売業」282件の順で多く、支給決定件数は「医療、福祉」148件、「製造業」100件、「運輸業、郵便業」と「卸売業、小売業」63件
  4. 職種別(大分類)において、
    請求件数は「専門的・技術的職業従事者」523件、「事務従事者」444件、「サービス職業従事者」284件
    支給決定件数は「専門的・技術的職業従事者」173件、「サービス職業従事者」91件、「事務従事者」83件
  5. 職種別(中分類)においては、請求件数、支給決定件数ともに職種別(大分類)の「事務従事者」のうち「一般事務従事者」323件、57件が最多
  6. 年齢別において、
    請求件数は「40~49歳」597件、「30~39歳」490件、「20~29歳」448件
    支給決定件数は「40~49歳」174件、「30~39歳」169件、「20~29歳」132件
  7. 時間外労働時間別(1か月平均)支給決定件数は「20時間未満」が68件で最も多く、次いで「100時間以上~120時間未満」が56件であった。
  8. 出来事(*)別の支給決定件数は、
    「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」99件
    「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」83件
    「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」71件
    *「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの。

※請求件数は前年度より少し減少しているものの、支給決定件数は前年度より増加し、過去最多となりました。

令和2年6月からパワーハラスメントが法制化されました。その際に、要因として精神障害の労災認定基準も明記されています。
今回の調査では、そのパワーハラスメントが、支給決定(労災認定)要因のトップとなっており、精神障害の原因の一つとして、いわゆるパワハラが認められるという認識が広がっているのではないかと分析されています。

予てより上昇傾向でしたが、昨年の法制化により一層認識が高まっていると思われます。

詳しくは、こちらから
<令和2年度 「過労死等の労災補償状況」を公表します>
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19299.html

このような状況であるからこそ、ハラスメントの研修には注意が必要です。
知識や社内制度も大事ですが、社内の信頼関係の構築やコミュニケーションの改善など、組織開発や風土改善も並行して行うことが重要です。

今回の調査を確認して、会社にとって必要なアクションを実施していきましょう。