高度プロフェッショナル制度の健康時間管理について
「高度プロフェッショナル制度」と聞くだけで、うちには関係ないと思ってしまうと思いますが、実はその結果や状況などは今後の労働行政の着目点を想定するにはいい材料であったりします。特に「健康管理時間」については、昨今の労働時間管理に対する考え方を理解するうえで非常に有効です。
そのよい資料が厚生労働省より公表されました。「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況(令和3年3月末時点)」です。(令和3年6月30日公表)。
ご存じのとおり、高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は適用されず、「労働時間」という概念はありません。しかし、安全衛生法においては「すべての労働者」が対象であり、その労働者の健康と安全を確保することが義務ですので、健康管理につなげるためとして「健康管理時間」は把握することとされています。では、その健康管理時間とは?
※健康管理時間……この「健康管理時間」は、対象労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間のことをいいます。
また、高度プロフェッショナル制度は、定期報告の義務があります。その報告の結果(「労働者の1か月当たりの健康管理時間(※)」など)を集計した結果が今回の報告書です。
2019(平成31・令和元)年4月1日から2021(令和3)年3月31日までの間に受理した高度プロフェッショナル制度の決議届及び定期報告によると、令和3年3月末時点で、同制度の導入企業数は20社(21事業場)、対象労働者数(合計)は552人という状況でした。
労働者の1か月当たりの健康管理時間をみると、集計対象となった全17事業場のうち6事業場で、月300時間以上となっている対象労働者がいた結果となっています。
健康管理時間には休憩時間も含まれるため、労働時間と単純には比較はできません。
ただ、通常の労働者が月300時間働くと仮定すると、残業が月100時間を優に上回ることになるため、高度プロフェッショナル制度が過重労働につながるという声に繋がっているようです。
これらの結果から、通常の労働者はもちろん、裁量労働制やフレックスタイム制度の体調となっている労働者、管理監督者に対する労働時間の管理においても同様に、時間の把握をしっかりと行うことが今後の労務管理上も最優先と言えるでしょう。
今一度、企業として把握できる仕組みとなっているか、実際に行っているかを振り返ってみてはいかがでしょうか。
<厚生労働省:高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況(令和3年3月末時点)>
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