有給休暇の一斉付与って?

「有給休暇の一斉付与」をご存じですか?

文字通り1年の決まったタイミングで全社員に有給休暇を一斉に付与する方法のことですが、この方法を実施する(変更する)場合には十分注意が必要です。

2019年4月より始まった「有給休暇の5日取得義務化」

すでに対応が完了しているかと思いますが、有給休暇の付与、取得の日数管理が煩雑化することを懸念して導入の検討をされたことがあるかと思います。

現在のコロナ対応の中で休暇の在り方を再考したり、事業承継等、次世代へ事業を引き継ぐにあたり、制度・管理面をシンプルにしておくため等、改めてこの方法の導入のご相談を受けることがあります。

通年採用が一般的になってきた昨今、入社月日で有給休暇を管理することは、事務手続き、管理手続きの煩雑化でしかありません。一斉付与を行うことで管理が非常にシンプルになります。
ただ、有給休暇の法制度をしっかり理解の上で導入しないと思わぬ落とし穴に嵌ってしまうことがあるので注意が必要です。

特に注意が必要な「有給休暇の時効」

一斉付与を行う場合、労働基準法の関係から、本来付与されるべき日より後の日にすることはできません。常に本来付与される日よりも前の日に、次の有給休暇を付与することになります。

つまり、「前回分の残日数+今回分の日数+一斉付与による次回の日数」です。

(4月入社で6年目の社員、1月に一斉付与を実施した場合)
イメージとしては、10日+18日+20日=48日 となるわけです。

ここで勘違いをされる事業主さんがいらっしゃいます。

「有給休暇って40日が上限じゃないの?」と

残念ですが、そんな定めはどこにもありません。
あるのは『有給休暇の時効』についてだけです。

上記の例で説明すると、

10日・・・5年目(入社4年6カ月)の有給休暇残日数(時効は6年6カ月のタイミング)
18日・・・6年目(入社5年6カ月)の有給休暇付与日数(時効は7年6カ月のタイミング)
20日・・・6年目(入社5年9カ月)の一斉付与日数(時効は7年9カ月のタイミング)

一斉付与が入社から5年9カ月のタイミングなので、6年6カ月までの期間は(使わなければ)48日間の有給休暇を保持しているということになります。

上限40日ということはありません。くれぐれもご注意ください。

導入ために必ず行ってほしいこと

一斉付与は、有給休暇の管理上、社員が多ければ多いほど非常に合理的ではあります。
とはいうものの、企業の要員管理施策と連動したしっかりとしたシミュレーションが必要です。
社内の人事総務、専門家と相談の上、経営インパクトを意識して導入しましょう。